349 教員働き方改革_中教審提言 (20240514)

[通算HP閲覧回数 81,820回 (2024/05/14現在)、連絡先:info@minatani-kiyoshi.com]
▼2024/5/13に中央教育審議会初等中等教育分科会質の高い教師の確保特別部会『「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)』を盛山正仁文部科学大臣へ提出しました。
▼主な内容は、①全教員へ一律支給されている残業手当て相当額を月給4%から10%へ増額する(残業実績に基づく支給は見送り)、②学級担任手当てを新規支給、③11時間の勤務時間インターバルを導入(夜10時に退勤したら翌日出勤は11時間後の朝9時以降)などです。(詳細は下の【概要】をご確認ください)
▼実現のためには年2000億円以上の財源が必要ですが、来年の通常国会に予定されている「教員給与特別措置法(給特法)」改正案の審議が注目されます。今回の中教審の提言が学校教育崩壊を阻止するための有効な方策かはかなり疑問ですが、たとえ小さな一歩に過ぎなくても前に進むことは歓迎すべきことかもしれません。しかし、法律が改正されてこそやっと実現ということになるので、まだまだどうなるかは分かりません。
▼問題の先送りが、今の学校教育崩壊一歩手前の状況を作り出してきたと思うのですが、今回も問題の先送りと思えてなりません。「戦力の逐次投入」という日本の伝統芸なのかもしれませんが、しっかりと現状を分析・検証して、根本の部分にズバッと手をつけてほしいものです。
教員1人当たりの仕事量を、8時間勤務で完了できる量にすることが最も根本的なことです。そして、そうなっていない理由は何か、そうならない理由は何か、何をどうするとそうすることができるのか、ここの部分を明確に分析することが問題解決の第一歩です。さらに、分析に基づいて解決策を立案し、その策を実施する工程表を作成し、その工程表を着実に実現してこそ、子ども達がより良い学校教育の中で成長をすることができます。財源問題も徐々に予算を増額していけば社会の理解を得られるのではないでしょうか。そして将来展望がはっきり見えてくれば、学校はあと少しの間は頑張ることができるかもしれません。しかし、小手先の改善ポーズだけでは学校教育崩壊が進むだけです。

中教審『「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)』はこちらからどうぞ

中教審「質の高い教師の確保特別部会」の審議状況はこちらからどうぞ

「審議不十分」 中教審の教員不足解消策、教職員組合が相次ぎ批判 (毎日新聞ニュース)

 



344 教員の残業手当支給へ前進? (20240413)

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公立学校の先生の残業代が未支給となっていることが問題となっています(国立や私立の学校は残業手当が支給されます)。中央教育審議会ではこの問題への対応が審議されています。その審議の様子が新聞報道されました。
▼1か月30日間とすると平日は22日、一日8時間勤務とすると8時間/日✕22日/月=176時間/月の勤務となります。給料月額の10%分の残業手当は17.6時間/月の残業分に相当することになりそうです。
▼ほとんど残業をしない先生でも給料月額の10%相当分の残業代が自動的に支給されることは、若手や中堅の先生など、毎日とても忙しくて月70時間以上も残業しなければならない先生からすると、とても納得はできないだろうし、社会的にも理解を得にくいかもしれません。
▼教員の働き方改革(残業削減)のためには、労働基準法の定めどおりに、各教員の実際の残業時間に対応した残業手当を支給すべきと思いますが、ひょっとするとちょっとだけ前進したのかもしれません。
▼とはいうものの、最終的には、財源の問題を解決して、国会で法改正や予算が議決されないと実現しないので、先行きはまだまだ不透明です。

中教審 質の高い教師の確保特別部会(第11回) 配付資料
304 教員働き方改革を中教審へ諮問 (20230630)

343 教員勤務実態調査 (20240405)

[通算HP閲覧回数 80,736回 (2024/4/5現在)、連絡先:info@minatani-kiyoshi.com]
▼2024/4/4に文部科学省初等中等教育局が令和4年度教員勤務実態調査の集計確定値を公表しました。
▼中学校一般教員の1日当たり在校時間は、平日11時間01分(残業3時間15分)、土日が2時間18分(残業2時間18分)です。一ヵ月30日間とすると月約21時間の残業をしているようです。しかし、一ヵ月6万円以上が想定される残業手当は、法律の定めにより支給されません。しかも、小中学校には衛生管理やアレルギーへの対応などの給食指導(児童生徒の安全確保)があるので、企業のように昼の自由な1時間の休憩時間もありません。
▼実際の回答データを見てみると、1年以上前の調査なのでデータとしてはやや古いですが、興味深い実態も明らかになっています。
▼教員調査のQ35「あなたの学校の校長等は、自らの権限と責任においてリーダーシップを発揮し、一部の教職員に業務が偏ることのないよう校内の業務分担を見直すことや、業務を削減するなど、働き方改革を進め教員の勤務環境を整えていると思いますか。」の回答は、「そう思う」が小学校16.9%、中学校14.7%、高校11.0%で、逆に「まったくそう思わない」が小学校9.0%、中学校12.3%、高校16.1%でした。なぜ校種によって校長のリーダーシップに差が生じるのでしょうか、不思議です。
▼Q5-4では、一人の教員が一週間に担当する授業のコマ数も調査しています。児童生徒は学校で一日6コマ✕5日=週30コマの授業を学びます。一般教員は、週30コマの内の、小学校は週26コマぐらい、中学校は週22コマぐらい、高校は週18コマぐらいを担当しているようです。勤務時間内に授業準備・採点・事務仕事ができる時間は、小学校では一日1コマぐらいしかなく、逆に高校では一日の半分ぐらいはあるようです。校種によって大きな差がありますね。しかも、小学校は給食指導があって、高校には給食がありません。
▼また、Q19-1の「あまりに仕事がありすぎる」の回答にも、校種の差がはっきりと出ています。部活動関係の回答もそうです。
▼「論文を読むときは、元データ・生データを確認せよ」と、大学で学んでいたときに担当教授から厳しく指導されました。全体をまとめた報告書では分からないことが、元データ・生データを見ていると浮かび上がってきます。面白いですね。

令和4年度教員勤務実態調査集計【確定値】(R6/4/4 文科省公表 PDFファイル)
同調査【教員調査・学校調査票 基礎集計表】 PDFファイル

341 羽島市学校構想検討委員会 (20240322)

[通算HP閲覧回数 80,262回 (2024/3/22現在)、連絡先:info@minatani-kiyoshi.com]
▼2024/2/13に「第6回羽島市新しい時代の学校構想検討委員会」を傍聴しました。この委員会では、新し い時代の学校のあり方、教育課題、教育活動、学校運営、適正規模等に関する審議が行われています。委員は、大学教育学部教授2人、小中学校教職員3人、中学校運営協議会委員5人、自治会・PTA・児童委員・公募委員5人です。一般市民というより、学校の様子をよく御存知の方が中心の委員会のようです。
▼今回の協議題は「羽島市の新たな学校像」についてでした。市教委から、小中一貫教育(羽島市、北方町)、学校選択制(美濃市)、学びの多様化校(岐阜市)、教育課程特例校(瑞穂市岐阜大学附属)、合同授業・活動(山県市)の事例が紹介され、それらを参考に各委員の方々の自由な意見交換が行われました。委員会としての方向性の議論は次回以降のようです。
▼市教委配付資料に興味深いデータがありました。画像のデータは、市内5中学校等の保護者、教職員、学校運営協議会委員へのアンケート結果です。その内訳を見ると、保護者と教職員はほぼ同じ傾向でしたが、教職員と学校運営協議会委員とでは大きな違いがありました。概ね2倍以上の差がある項目をあげると、教職員より学校運営協議会委員の方が圧倒的に多かったのは、Q4のキ、カ、Q5のウ、Q7のエ、カで、逆に教職員の方が圧倒的に多かったのは、Q7のオでした。
▼私には、このような差が生じた理由は分かりませんが、学校教育法第21条に義務教育の目標が10項目定められていて、そのほとんどが教科書の内容を理解し活用できることに結び付いていること、つまりは学校の教員は「確かな学力の育成」が義務教育の基本的で重要な目標であることを意識していることかな、と思ったりしています。
▼「確かな学力」が、アンケートのQ4「子どもたちや我が子に身に付けさせたい、これからの社会人に必要だと思う力や姿は」の選択肢にもしも含まれていたら、結果はどうなっていたでしょうか。多くの子ども達が、お金を払って学習塾へ通っている現状から推察すると、かなり上位に入ってくるのかもしれませんね。
▼ところで、今から10~20年ぐらい前には、「学習意欲の格差」が話題になっていました。最近は、「まったく勉強しない子が大きな集団となって存在」「勉強する子はしっかりやっている」という、学習意欲でなく「学習習慣・学習量の格差」が顕著になってきたようです。
先生と子ども達の笑顔が溢れ、先生と子どの達の会話があちこちから聞こえてくる学校で、毎日何時間も教室で行われる国語・算数数学・英語・理科・社会・芸術・技術家庭・保健体育・道徳などの授業を、先生も子ども達も楽しく学んでいる姿を心に描きながら、「羽島市新しい時代の学校構想検討委員会」の議論に注目していきたいと思います。

【会議要旨】羽島市新しい時代の学校構想検討委員会 はこちらへ (羽島市HP)
308 山県市方式 小規模校守る (20230728)



339 子育てについて市民意見交換会 (20240308)

[通算HP閲覧回数 79,715回 (2024/3/8現在)、連絡先:info@minatani-kiyoshi.com]
▼2024/2/17に羽島市議会民生文教委員会担当で、議員と市民との意見交換会を開催しました。テーマは「羽島市の子育て環境の充実に向けて」です。市ホームページや議会だよりで参加者を募集し、民生文教委員会の委員6人と参加市民14人の合計20人が3グループに分かれて意見交換をしました。
▼あるグループでは私が進行係を務め、子育て環境といっても範囲が広いので、グループの皆さんに話題にしたい分野をお伺いしたところ、教育分野、特に中学校休日部活動地域移行と小中学校不登校が圧倒的に多かったので、その分野に絞って意見交換をしました。
▼部活動については、生徒や保護者によって中学校部活動に求めるものが異なること、そしてそのことを踏まえた保護者や生徒への説明が十分ではないこと、その結果不満が出やすいことや、子ども達が自分が興味関心を持っている分野を自由に選べるとよい、などの意見がありました。中学校の先生の多忙化解消、休日の勤務軽減という理由は理解できるが、そのしわ寄せが子どもへ来るのは納得しがたい、という意見もありました。
▼不登校については、原因が様々で分からないので対応策も考えにくいという意見や、子ども達は不登校の子でも気にすることもなく自然に接しているという意見があり、子ども達が、多様な教育環境(従来の小中学校やフリースクールなど)から自分にとって最も相応しい環境を選択して学ぶことが普通になると良いという意見もありました。子ども達の多様性を尊重する取り組みが重要という雰囲気でした。
▼市民の皆様の忌憚のない意見を聞くことがとても勉強になりました。ありがとうございました。