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▼2022/2/1の新聞に「学校の先生が足らない、学級担任がいない」という記事がありました。文科省が教師不足について全国調査した結果のようです。
▼記事では全国2558人、岐阜県40人と不足人数を見出しにしていますが、「報道を鵜呑みにせず原本に当たって確認せよ」というわけで、ニュースソースと思われる2022/1/31開催の中央教育審議会「『令和の日本型教育』を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会」で配付された「資料2-1 教師不足に関する実態調査」( こちらを参照(PDF) ) を確認しました。
▼教師の不足人数は配付資料の5~6ページ( 小学校の表 ・ 中学校の表 )に示されていますが、その表には不足人数以外にも「義務標準法に基づく充足率」(国が定めた標準教員数に対する実際の教員数の割合であり、こちらこそが教師不足を示す数値とも言えます。)も示されています。そして、そこには岐阜県は99.1%で47都道府県の最下位であるという衝撃的な事実がありました。全国平均は101.8%、愛知県は101.7%、三重県は104.3%、最高は東京都の108.2%でした。東京都は岐阜県の約一割増しの教員数です。新聞記事の見出しとしては「岐阜は40人不足」よりも「岐阜は教員充足率最下位」の方が良かったのかもしれません。
▼また、配付資料の7ページには、小学校の11.5%、中学校の9.3%の学級で、正規採用教員ではない、いわゆる臨時任用の講師が学級担任をしているという全国データも示されています。特別支援学級ではなんと約24%にもなります。教員不足は、講師のなり手がいないことよりも、正規採用教員が必要数に対して大きく不足していることが本質的な大問題です。
▼【ここからは教育行政の専門的な話題】
▼今回の文科省調査の「教師不足」は、「臨時的任用教員等の講師の確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数が、各都道府県・指定都市等の教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしておらず、欠員が生じる状態を指す。」そうです。また、「学校に配置することとしている教師の数(配当数)は、義務標準法等に基づき算定される教職員定数ではなく、各都道府県等の教育委員会において学校に配置することとしている教師の数であり、「教師不足」は義務標準法等に基づき算定される教職員定数の標準に対する教職員の配置状況を指すものではない」そうです。(なので、調査結果の表に「義務標準法に基づく充足率」も合わせて掲載して配置状況の各県比較をそれとなく示したわけですね。)
▼公立学校の教員の人数については、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(標準法)などで、標準的な教職員定数(以下「標準法定数)」といいます)が定められています。この「標準法定数」は、学級数や児童生徒数から計算式によって自動的に算出される「標準定数(基礎定数)」と、政令により政策的に配分される「(政令)加配定数」(別名を研修等定数:文科省が鉛筆を舐めながら各都道府県へ配分する定数)の合計となっています。( 「教職員定数の算定について」を参照 )
▼しかし、この標準法に基づき算定される「標準法定数」が、そのまま岐阜県の教員数となるわけではありません。公立小中学校の教員の人件費は国が1/3、県が2/3を負担しているので、岐阜県の財政当局が、予算査定でどの程度の人数の教員人件費を予算化するか、つまりは岐阜県の教員数を決定します。この県財政当局が決定した教員数が「条例定数」です( 「岐阜県職員定数条例」・「岐阜県市町村立学校職員定数条例」 を参照)。
▼この「条例定数」の範囲内で、県教委の人事担当部局が各学校の教員数を決めるのですが、人事管理上、全てを各学校へ配るのではなく事前に把握できない出来事などに対応するために各学校へ配らない「保留定数」を残しておきます。なので、実際に各学校へ配置される教員数である「配当定数」は「配当定数」=「条例定数」-「保留定数」となります。
▼本来ならば、各学校へこの「配当定数」分の「正規採用教員」を配置すべきなのですが、県の行財政改革で人件費圧縮のため正規教員数を減らしたことなどにより、岐阜県では正規採用教員が大きく不足している状態が恒常化しています。その結果、各学校では正規採用教員が配置されない分(欠員分)を「臨時任用教員(いわゆる講師)」を採用して補充しています。
▼今回の教員不足数は、この欠員分を補充するための「臨時任用教員(講師)」を採用することができず、欠員のままになっている教員数(「教員不足数(欠員数)」=「配当定数」ー(「正規採用教員」+「欠員補充臨時任用教員(講師))」)を指していると思われますが、実感より少ないので他の要素の影響が加わっている可能性もあります。
▼教員不足には、このような「配当定数」に関するもの以外に「産育休や病気休職の教員の補充教員が見つからないので教員が足らないままになっている」というものもあります。産育休の教員からは「補充教員を自分で探してほしい(そうすれば希望通りの育休が取得できる)と言われた」といった声も聞こえてきます。
▼また、例えば中学校では、教科別の授業時間数の関係で国語教員2人と理科教員2人が必要だったのに、配置されたのは国語3人理科1人だったので、合計人数では「配当定数」を満たしているけれど実際には理科の先生が1人足りないという隠れた教員不足もあります。(小学校教員は全教科担当できますが、各教員は算数、国語、体育などの専門分野を持っているので、各小学校へは教員の専門分野が偏ることないように配置しなければなりません。)
▼なお、中教審では「令和の日本型学校教育」について様々な議論が展開されています。会議資料や会議要旨は文科省HPで公開されていますので以下でどうぞ。
2022/1/31 中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会(第2回)会議資料 (HP)
2021/11/15 中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第5回)・初等中等教育分科会教員養成部会(第126回)合同会議資料 (HP)
2021/11/15 「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について関係資料(1) (PDF)
▼H君、T君、与えられた情報だけでは真実に迫れないよ。日々勉強。ところで、文科省は教師と教員をどのように使い分けているのだろうか。
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