9 公教育の課題

このホームページの「岐阜県の子ども貧困率と学習状況」(5/15)で、「義務教育の大きな役割の一つに、育つ環境の違いが将来へ与える影響を可能な限り小さくするために、自らの可能性を伸ばす機会をすべての子ども達に等しく提供することがある」と書きました。

「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」を推進していらっしゃった国立情報学研究所の新井紀子氏が、そのプロジェクト等で得た知見として次のようなことを指摘されています。

  • AIは意味は理解できない。正しさは保証できない。(ただし、大規模データと深層学習用いると、よく「当たる」こともある。)
  • なぜ、意味がわかるはずの高校生が意味がわからないAIに敗れるのか
  • AIにできないことこそ、生徒もできなかった
  • 教科書が読めない ⇒ 予習も復習もできない、自分ひとりでは勉強できない、貧困下でも塾に通わなければならない ⇒ 勉強の仕方がわからない、AIに職を奪われる・新しい職種に移動できない ⇒ 労働力不足なのに失業や非正規雇用が増大 ⇒ 格差拡大、内需低下、人口がさらに減少
  • 中学を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすることこそが公教育の最重要課題

「読み書きそろばん」が学力の基本だと言われることがありますが、「文章を読んで内容を理解できる(読解力)」ことと「何かを創り出すことができる(創造力)」ことが、今の子ども達の未来では「読み書きそろばん」以上に重要になるのかもしれません。

 

8 高校普通科を多様化(教育再生実行会議提言)

5月18日に各メデイアが政府の教育再生実行会議第11次提言を一斉に報じました。岐阜新聞は1面見出しに「高校普通科を多様化」としました。提言本文を読むと普通科の類型の例として次の4項目があげられています。

  • 予測不可能な社会を生き抜くため自らのキャリアをデザインする力の育成を重視するもの
  • グローバルに活躍するリーダーや国内外の課題の解決に向け対応できるリーダーとしての素養の育成を重視するもの
  • サイエンスやテクノロジーの分野等において飛躍知を発見するイノベーター等としての素養の育成を重視するもの
  • 地域課題の解決等を通じて体験と実践を伴った探求的な学びを重視するのもの

他にも提言には多くの内容が含まれています。

関心をお持ちの方は以下のホームページや提言本文を御覧ください。

政府の教育再生実行会議ホームページ

提言本文「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について(第十一次提言)」(令和元年5月17日)【PDF】

これまでの提言には、平成25年2月の第一次提言「いじめ」、平成25年4月の第二次提言「教育委員会制度」、平成25年10月の第四次提言「高大接続と大学入試」、平成28年5月の第九次提言「障害のある子供への教育、不登校等の子供たちへの支援」、平成29年6月の第十次提言「家庭地域の教育力向上と教員の働き方改革」などがあります。

ところで、教育再生実行委員会の委員の方々は、東京など大都市圏に生活の本拠を構えていらっしゃる方が多数です。そのような方々から見えている大都市圏の公立高校の課題と、岐阜県や羽島市のような地方に生活している私たちから見えている地元の公立高校の課題は当然異なっています。このことについては十分に認識する必要があります。

7 岐阜県の子ども貧困率と学習状況

岐阜新聞5月15日朝刊1面に岐阜県内に暮らす子どもの貧困率と生活環境や学習環境の状況を調査した岐阜県「子ども調査」の記事が掲載されていました。

記事によると、「自分は価値のある人間だと思うか」という自己肯定感の問いに「とてもそう思う」と「どちらかといえばそう思う」を足した割合は、中学2年の等価可処分所得122万円未満の家庭は35.2%、183万円未満は52.3%、244万円未満は61.6%、244万円以上は64.7%であり顕著な差が表れたとされています。(注:等価可処分所得とは世帯の可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取りの収入)を世帯人員の平方根で割って算出した所得のこと)

私は、義務教育の大きな役割の一つに、育つ環境の違いが将来へ与える影響を可能な限り小さくするために、自らの可能性を伸ばす機会をすべての子ども達に等しく提供することがあると思っています。このような記事(調査結果)を読むと、義務教育の役割の大切さを改めて痛感します。私の地元「ふるさと羽島」において義務教育がその役割をしっかり果たせるよう精一杯努力してまいります。

岐阜県「子ども調査」結果の詳細は以下のリンクから

岐阜県子ども調査結果概要リーフレット(PDF)

岐阜県発表資料(PDF)