2019年7月に岐阜市立中学校3年生徒がいじめを苦に自殺した事案を受けて設置された「岐阜市公教育検討会議」の提言が2020/7/3に岐阜市長へ提出されました。
委員には全国で活躍中の妹尾昌俊氏(文科省学校業務改善アドバイザー)がいらっしゃるので、その提言内容に注目していました。提言では、子ども達に対する教育理念として「すべての子どもの『自由の相互承認の感度を高める』教育を推進する」が掲げられています。本質的な課題はこれをどのように具現化するかです。そのことについては、岐阜市教委の教育行政や学校運営に対する提言部分と重なるのですが、「各学校の業務と多忙の状況を可視化し、診断して、改善を講じよ」とあります。妹尾氏によると「学校だけに頑張れと叱咤激励しても限界はありますから、教育委員会サイドで、負担軽減策を講じたり、各校共通して取り組んだほうがよいことなどを探して実行することを提案しました。」だそうです。この提言を受けた、岐阜市教委の教育行政や学校運営についての今後の変化に大きな関心があります。 ( HP表示回数 18,081カウント )
「岐阜市の子どもの未来を拓く公教育に関する提言」(岐阜市公教育検討会議答申 R020703)
なお、このいじめ事案では、市教育委員会に「第三者委員会」が設置され、自殺の主要因はいじめと認定しました。そして、教員間の情報共有や連携ができておらず、保護者との連携も不十分だったと指摘するとともに、いじめに対応する方針が実態に即しているかを学校と市教委が点検するなどの再発防止策を盛り込んだ報告書を、2019年12月に市教委へ提出しています。報告書の多くの部分は個人情報保護のため黒塗りとなっています。
対して、市長部局の企画部には「公教育検討会議」が設置され、いじめ自殺事案を背景に市長と教育委員会との連携による教育施策の総合的な推進に関する事項を審議し、今回市長へ提言が提出されました。
岐阜市公教育検討会議の会議録及び配付資料(岐阜市ホームページ)
中学生の自殺を受けて教育のあり方について考えたこと No1(妹尾昌俊氏の記事)
中学生の自殺を受けて教育のあり方について考えたこと No2(妹尾昌俊氏の記事)
ところで、当時のテレビ報道では、市教育長は学校の体制が不十分だったと説明し、校長は担任から報告がなかったと説明し、9月の新聞では該当担任が年度途中で退職したことが報じられました。マスコミ報道だけなので軽々な判断をすべきではありませんが、これらの報道に接して違和感を感じた教員や教員OBは私だけではないと思います。
2020/7/5中日新聞朝刊に市教育長の「子どもたちと話した時に『先生が忙しそうだから、話しかけると悪いと思う』と言われ、ハッとした。」というコメントが掲載されていました。これが、今回の自死事案の教育行政、学校運営サイドの根源的な背景、要因だと思っています。
また、「第三者調査委員会」の委員長は元岐阜大学教育学部教授です。該当校に勤務する教員は非常に多忙でしたが、その要因の一つは岐阜大学教育学部の教育実習校であったことですが、委員長はその関係者です。「公教育検討会議」の副会長は元県教委幹部で岐阜市教育長の県教委勤務時の同僚です。該当校のような研修校・実習校へ研修派遣された研修校OBでもあります。
委員長は私が校長の時に外部委員会委員長やSCをお願いしていた方であり、副会長も私が県教委勤務の時の同僚です。お二人ともとても良い方で大変信頼できる方です。
しかし、客観性、公平性の観点からは、できれば県内の教育関係者を避けて、他県の教育関係者が良かったと思うのも、私だけではないと思います。今回の自死事案の背景には、前述の「ハッとした」というような岐阜県や岐阜市の教育行政や学校運営の特殊性が潜んでいる可能性もあるので。
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